・介護保険にオンブズマン
 自治体に設置 サービス質監視
 
平成12年1月13日 読売新聞より

政府は、4月から始まる介護保険制度で良質な介護が提供されるよう、地方自治体単位で「介護サービス・オンブズマン委員会」(仮称)を設置する方針を固めた。ドイツ訪問中の丹羽厚相が12日夜(日本時間13日未明)、ボンで記者団に明らかにした。同委員会は、介護サービスの利用者からの苦情相談に乗るほか、事業者によって適切な対応が取られているかどうかなど介護の現場の実態を調査する。

 オンブズマン委員会は、都道府県や介護保険を運営する市町村単位で設置する第三者機関。委員の構成は、要介護者の家族や健常者の高齢者、弁護士らを想定している。委員会設置の最終的な判断は地方自治体にゆだねるが、国として運営費を財政支援するなど積極的にバックアップする。

 丹羽厚相は、介護の質の確保が新しい保険制度の成否のカギを握ると見ており、介護施設への情報公開の義務付けと合わせ、同委員会によって、高齢者が安心して適切な介護を受けられる環境の整備を図る考えだ。具体的には、在宅・施設介護の両方について事業者のサービスの質をチェックし、密室状態で虐待などの問題が認められた場合は、改善措置を取るための一定の権限を持たせる。

 政府は、介護保険制度のスタートと同時にオンブズマン委員会も発足させたい方針で、厚相の私的諮問機関「より良い介護保険に育てる会」(堀田力さわやか福祉財団理事長、樋口恵子東京家政大教授ら有識者8人で構成)を19日に設置し、早急に内容を詰める。

 介護の現場では、要介護者をしばり付けて行動を制約するなど、人権を軽視した措置もまま見られるが、痴呆や寝たきりの高齢者などは事実上、苦情を口にできず、家族らも介護を受けられなくなる懸念から、声を上げにくいのが実情という。95年に介護保険を導入したドイツでも、人手不足、財政難を原因とする虐待や放置が「介護の暴力」として社会問題化している。

 政府はオンブズマン委員会の設置によって、苦情があってから対応する受け身の対応を脱し、積極的な質の向上に乗り出す。


新着情報へ戻ります