・介護の社福法人 要件緩和
 ヘルパー派遣 資産1000万円、 特養 借地OK

平成11年9月2日 読売新聞より

 厚生省は9月1日、来年4月から実施予定の介護保険制度スタートに合わせ、介護の担い手となる社会福祉法人の設立要件を大幅に緩和する方針を固めた。ボランティア団体が社会福祉法人化する際のハードルを下げることで、民間事業者だけでは不足が懸念される在宅介護サービスを充実させるのが狙いだ。民間企業が参入できない施設介護サービスの分野でも、基盤整備を促進するため、特別養護老人ホーム(特養)を設立しやすくするよう、要件を緩和する。

 在宅サービスを行う社会福祉法人の設立要件は、施設を持たずに、ホームヘルパーの派遣事業などを行う場合は1億円以上の資産を保有していることが要件となっているが、これを1千万〜2千万円にまで引き下げる。また、日帰り介護(デイサービス)や短期入所生活介護(ショートステイ)など通所施設を経営する場合は、土地と建物を所有していることが設立の要件となっているが、新たに賃借での経営も認めることにする。

 一方、施設介護サービスを行う社会福祉法人についても、土地と建物を所有していることが義務付けられているが、需要が多く、施設介護の中心となる特養に限って土地は賃借でも運営を認める。
 施設介護サービスは民間企業の参入が認められておらず、施設サービスの中心を担う特養の整備促進の手段として、自民党行政改革推進本部が設立の垣根を低くするよう強く求めていた。

 厚生省はこれらの社会福祉法人の規制緩和について、年度内に通達を改正し、来年4月からスタートする介護保険に備えることにしている。


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 来年4月から実施予定の介護保険制度に向け、厚生省が在宅介護重視の姿勢を強めている。来年度予算の概算要求では、施設サービスの整備を抑える反面、在宅サービスを充実させている。介護報酬面でも、民間参入の促進を狙って在宅サービスの仮単価を高めに設定したほか、同居家族の介護への報酬支払いを市町村の判断で認める方針を打ち出し、「在宅シフト」への誘導を図っている。

 介護保険では、市町村が在宅と施設の両サービスのバランスをとって整備を進めているが、施設サービスを重視するほど介護にかかる総費用がかさみ、1人当たりの保険料が高くなる。
 この総費用の17%を65歳以上の高齢者の保険料で賄うことから、その保険料は、96年に試算した1人月額2,500円(全国平均)に比べ、415円高い2,915円となる見込みだ。厚生省では、今後の高騰を避けるため、在宅サービスの比重を高めるよう誘導することにしたものだ。

 厚生省は、来年度予算の概算要求に介護サービス基盤整備費として2,283億円を盛り込んだ。今年度予算に比べると、4分の1近くに減っているが、これは介護保険導入に伴い、運営費補助がなくなったのに加え、老人保健施設の整備目標を今年度の4分の1に減らし、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)を半減させるなど、施設サービス整備を抑制したのが主な理由だ。
 しかし、その一方、在宅サービスについては、今年度と同水準の整備を目標としているほか、在宅介護支援センターの基幹センターを新たに200ヶ所設けるなど力点を置いている。また、要介護認定から漏れた高齢者の受け皿として、高齢者生活福祉センターの整備を200ヶ所分上積みし、グループホームを倍増させる予算を盛り込んでいる。

 厚生省は先月末に公表した介護報酬の仮単価でも、介護を受けながら長期療養する高齢者が入院する「療養型病床群」の平均報酬月額を昨年末の試算から3万円引き下げる一方、身体介護など在宅サービスについては、おおむね現行より1割程度高めに設定した。これは民間事業者の参入を促し、在宅サービスを充実させると同時に、保険料が高くならないよう施設サービス費を抑えるためだ。

 また、厚生省は、在宅の高齢者を同居家族が介護した場合でも、一定の条件を満たせば、報酬を支払う方針を決め、省令改正案を医療保険福祉審議会に諮問した。家族介護への報酬については、対象地域を限定すべきだとの意見が強かったが、厚生省は市町村の判断で実施できるようにし、民間事業者の確保が難しい地域では、施設に頼らず、在宅での家族介護を選択できるようにした。
 

 


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