・介護保険負担軽減 自民内の先送り論封じ 財源調整など課題

平成11年6月10日 読売新聞より

 介護保険制度の見直し問題をめぐり、政府・自民党内で全市町村の保険料を軽減する案が浮上したのは、自民党内から来年4月実施の完全先送り論が噴き出すなど強い抵抗があったためだ。政府は、保険料負担軽減により予定通り実施することを確実にしたい考えだが、公明党などの反応や、財源をめぐる政府内の調整など難問が残っている。

 介護保険制度は、40〜64歳の保険料については全国一律だが、65歳以上は各市町村がそれぞれ決定する。現在、とくに問題になっているのは、この65歳以上の保険料負担だ。全国市長会の調べによると、平均で月額2,939円。5,000円以上の市もあり、高齢者にとっては負担が重い地域も出てくる。

 今回浮上した保険料の軽減策は、制度導入による「激変緩和措置」と言える。保険料以外でも、市町村によっては制度が始まってもホームヘルパーの確保などが間に合わず、「保険あって介護なし」の状態となる懸念もあることから、準備が間に合わない市町村に限って実施時期を遅らせることも検討されている。
 近隣市町村が要介護認定で広域協力する場合には、補助金で支援する方針だ。

 実際、政府が自民党とともに、こうした軽減策を検討し始めて以来、自民党内の空気は変わってきた。
 介護保険制度に慎重論が強かった村上・亀井派が6月4日に開いた介護保険をめぐる勉強会で、先送りを支持する意見は出ず、河野グループの会合でも予定通り実施すべきだという認識で一致した。表向きは反発の声が沈静化している。
 「制度の実施を先送りすれば、介護を待つ人から反発を買いかねず、次の衆院選にかえってマイナスになる」という声が強まっていることも背景にあるようだ。

 宮下厚相は6月9日、都内で開かれた全国市長会議で「介護保険は予定通り4月から実施する。できる限り自治体の要望に沿いたい」と述べ、同会議が国に対し保険料軽減の財政措置を求める方針を決めたことを受け、市町村の支援に全力を挙げる考えを示した。
 政府・自民党は、全市町村への財政支援による負担軽減策を軸に調整を進めるものと見られるが、与野党内には「もっと大幅な保険料の減免対策が必要だ」などの声があるのも確かだ。

 今後、保険料の徴収そのものを一定期間は猶予するなどの案が浮上する可能性もある。
 また、とくに公明党内には「高齢者の負担を軽減すべきだ」という声が強い。公明党との連携強化をはかる自民党としては、公明党に配慮せざるを得ない。公明党の出方が今後の論議の中で大きなウエートを占めそうだ。


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