・働き過ぎに要注意 中高年になったら心臓いたわって

平成11年3月18日 読売新聞より

 一般に心臓の機能は40歳過ぎから衰えてくるが、労働時間が長く、疲労感の強い人ほどその傾向が強いというから注意が必要だ。働き過ぎに注意するとともに、中高年になったら適度な運動とカロリーを控えた食生活など心臓に配慮した生活を送るよう、専門家はアドバイスしている。

 労働省の産業医学総合研究所(川崎市)が3年前から毎年、加齢による循環器の機能の変化を調べている。
 最初の年に行った調査では、機械製造業の営業職で働く22歳から60歳までの男性74人を対象に、通勤時間や睡眠時間、過去1ヶ月の労働時間、疲労感についてアンケートした。
 また、心電計をつけてもらい、血圧が高くなり過ぎないように制御する心臓のブレーキ機能を表す数値、安静時呼吸性不整脈の平均振幅(RSA)を測るなど生理学的検査を行った。

 それによると、RSA値は、20歳代で平均37ミリ秒、30歳代で平均32ミリ秒だが、40歳を境にほとんどの人が30ミリ秒を下回り、40歳を境に心臓の生理学的機能が次第に衰えることがわかった。
 ただ、同じ40歳代でもアンケートで疲れを訴えたグループにこの傾向が顕著だった。40歳では疲労感の強いグループの値は17ミリ秒で、疲れを感じないグループの26ミリ秒よりかなり低かった。50歳代でも同じ傾向だった。また、労働時間が長い人ほどやはり値が低いとの結果も出た。

 「RSA値が低い人が 必ず病気になるわけではないが、中高年になると、心臓の機能が低下し、労働時間や仕事疲れの影響を受けやすくなる。職場全体で中高年の働き過ぎに注意する必要がある」と調査をした同研究所の岩崎さんは言う。
 こうした加齢による影響に加えて、動脈硬化を進めるような生活習慣が心筋梗塞など心臓病を引き起こす引き金になる。

 数多くの心臓病患者を診てきた川崎市の聖マリアンナ医科大学内科教授の村山さんは、「中高年になったら、食生活と運動に気を配ってほしい」と話す。
 特に勧めるのは毎日の運動だ。ジョギングやウォーキングが体にいい、と言われるが、特に汗をかいたり、息切れしたりするほど激しい運動である必要はないという。「週1回のスポーツよりは毎日の通勤のときに、少しでも歩く方が効果的。1日1万歩歩く習慣をつけてほしい」と強調する。
 「もちろん、カロリーを控えた食生活で太り過ぎないことも大切。中高年世代は、心臓をいたわりながらいかに快適な生活を送るかきちんと考える時期に来ていることを自覚してほしい」と、村山さんはアドバイスする。



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