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血液中の水分不足
脳梗塞など引き起こす恐れ
平成11年2月8日読売新聞より
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寒い時期、お年寄りはトイレの回数を気にして、寝る前の水分を控えがちだ。しかし、必要以上に控え過ぎると血液中の水分が不足して、脳梗塞や心筋梗塞などの引き金になることもあるという。むしろ、就寝の前には積極的に水の補給を心がけたい。
お年寄りの夜のトイレが近いのは、老化現象によって、腎臓が昼間より夜間に多くの尿を作り出すようになるのに加え、睡眠の質も変わって深い眠りが短く、目も覚ましやすくなるため。男性の場合、前立腺が肥大して膀胱を圧迫し、尿を多くためられなくなることも要因となる。
おっくうな夜中のトイレを防ごうと、水分を控えがちになるが、日本医師会広報委員で矢島外科泌尿器科の矢島院長は「睡眠中は一晩にコップ1、2杯分の汗をかく。夕食の後、まったく水分を取らないと、起床まで半日近く水が補給されないことになり、体内の水分が不足して、血液が固まりやすくなってしまう」と警告する。
高齢者の死因の上位を占める心疾患と脳血管疾患のいくつかには、発症しやすい時間帯がある。心筋梗塞は起床の2、3時間後、脳梗塞は就寝中の明け方や起床直後に多いという。
いずれも血液が濃くなって血栓(血の塊)ができ、血管が詰まることによる。このような病気を予防するためにも、寝る前に水分をしっかり補給する必要がある。
「お年寄りはお茶が好きだが、お茶には利尿作用があり、飲んだ以上に水分が排出されてしまう。吸収の速いスポーツ飲料が最適だが、甘さが好みに合わなければ水で構わない」と矢島院長。
寝る前だけでなく、夜中にトイレに起きるたびに水を飲むと、なお体によいという。この場合、いちいち寒い台所に足を運ばなくてもすむように、まくら元に水差しを用意し、「トイレに起きたら、コップ1杯の水を飲むことを習慣にするとよい」という。
中高年以降の女性には、尿道などの筋肉が緩んで、おなかの力が加わると尿が漏れる腹圧性尿失禁に悩む人が少なくなく、これが水分を控えさせる一因ともなっている。
しかし、「腹圧性尿失禁はおなかに力が加わったときに生じるので、子供のおねしょとは違う。夜中に水を飲んでも、眠っている時に漏らすことはない」と矢島院長。
それでもトイレが気になる人は、体を冷やさないよう、電気毛布などを利用するとよい。寝ているときにつけっぱなしにしていると、熱くて汗をかき過ぎて逆効果になるので、寝る1時間ほど前にスイッチを入れ、布団に入る際に切るといいようだ。
水分補給を心がけるのは、入浴時も同様。汗によって水分が体外に出てしまうので、お風呂に入る前にもコップ1杯の水を飲んでおくことが体のためにはいいようだ。
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